小説置き場

夜行性のノイズキャンセル

夜凪 透子 | アーバン・サスペンスサイコスリラー現代ファンタジー

正しい情報だけが流れる街で、間違える自由が消えていく。

高校二年の槙透は、ある夜、通行人たちが一斉にスマホを取り出し同じ方向を向く光景を目撃する。SNSとAIが引き起こす認知汚染——「情報災害」。透はそれを感知する稀有な体質を持っていた。

トラブルシューター・飛羽に拾われ、夜の街を守り始めた透。だが市長の「美しく安全な街づくり」でAIが本格稼働し、市民は自ら監視し合い始める。飛羽が罠にかかり退場。テロリストの烙印を押された透の前に、衝撃の事実が突きつけられる——情報災害の基礎理論を生んだのは、飛羽自身だった。最後の切り札は「人間の不合理さ」。間違える自由を取り戻す百日間の戦い。

エピソード一覧 全25話

1
閾値以下のシグナル
透の日常。教室で「空気を読む」ことに疲弊している。放課後、裏バイト(落書き消し)の求人を見つける
2,962字 約6分
2
深夜二時の全員一致
初めての裏バイト。落書き消しの最中に耳鳴りが激化し、通行人が一斉にスマホを取り出す異様な光景を目撃する。飛羽と出会い、『情報災害』の存在を知る
4,654字 約10分
3
可聴域の外側
翌日の教室。耳鳴りの意味を知った透にとって、クラスメイトたちの同調が初めて『見えてしまう』。放課後、喫茶ブルー・ノートを訪れる
2,247字 約5分
4
夜間帯域の残響
ブルー・ノートにもう一人の常連がいた。エンリングの派遣社員ハルカ。透が初めてカナリアとして役立つ
2,186字 約5分
5
減衰と沈黙
古いアパートの情報災害を飛羽が鎮圧する。透は初めてその全工程を目撃する。三人体制の連携と、飛羽の手法の代償が見える
2,170字 約5分
6
発信元
ハルカのAPIパターン分析で、情報災害の発信元が偶発的ではなく意図的であることが判明。エンリング内部に仕掛ける人間がいる
1,982字 約4分
7
帰り道のノイズ
学校帰りに駅前を遠回りする日常観測の開始。商店街の昼と夜の違い。母親との何気ない会話。透の普通がまだ存在する重さ
1,905字 約4分
8
反響するエコーチェンバー
駅前で路上ミュージシャンが炎上に巻き込まれている。SNSのデマが物理空間に波及した現場。飛羽は介入せず、透に『見ろ』と言う
2,398字 約5分
9
跳弾の周波数
飛羽がゴムボールの物理学を講義する。壁への投擲で群衆の注意を分散させる手法の原理。デジタルにアナログで対抗する理由
1,707字 約4分
10
探知のキャリブレーション
飛羽による正式な弟子入り試験。商店街の炎上レビューの発生源を耳鳴りだけで特定せよ。透は方角を掴むが精度に限界がある
1,770字 約4分
11
グレープ味のパケットログ
ハルカ回。透のマッピングデータとハルカのログ解析を重ね合わせ、炎上アカウント群の行動パターン一致が判明。ハルカの二重生活
1,983字 約4分
12
アナログのジャミング
飛羽の戦術講座。偽のイベントチラシを物理的に配布し、商店街炎上の矛先を分散させる。情報を足すのではなく文脈をずらす
1,837字 約4分
13
同期と非同期
鎮圧任務第3件。深夜の住宅街で『不審者がいる』とSNSに一斉投稿。不審者は存在しない。恐怖ベースの同期は高周波で鳴る
2,361字 約5分
14
認証基盤の侵食
学校でアルカIDの全生徒利用が推奨される。便利だが透は薄気味悪さを感じる。SNS活動が学内評価に影響する仕組みが曖昧に示唆される
2,009字 約5分
15
暗号名のダークネット
大学地下の旧共同溝で夜の住人たちと初顔合わせ。通り名で呼び合う人々。透は自分がこちら側の人間であることを自覚し始める
2,519字 約6分
16
ヒューリスティクスの死角
飛羽が行動経済学の基礎を叩き込む。事なかれ主義は最も予測しやすい行動パターンだと気づく。ブルー・ノートでの夜の講義
3,921字 約8分
17
ファントムノイズの適応
鎮圧任務第4件。不審者通報パターンの再発。AIが学習済みで前回の手法が通じない。透が不合理な提案で突破する
3,940字 約8分
18
サーバールームの夜想曲
ハルカの昼の仕事。エンリングのデータセンターでの派遣社員としての日常。『調律師』という単語を初めて耳にする
3,794字 約8分
19
調律師
ハルカが『調律師』の情報をブルー・ノートで報告。飛羽が一瞬だけ動きを止める。飛羽の過去への手がかり
3,966字 約8分
20
ホワイトノイズの都市計画
市長が『美しく安全な街づくり』キャンペーンを発表。エンリングとの官民連携。透はテレビ中継で激しい耳鳴りに襲われる
3,922字 約8分
21
アカウント停止の周波数
キャンペーン開始後、批判的な投稿をしたクラスメイトのSNSアカウントが突然停止される。アルカIDの停止も伴い学内サービスが使えなくなる。教室は同調し透は何も言えない
2,938字 約6分
22
同期する沈黙
アカウント停止されたクラスメイトが不登校になる。教室では異論がなくなり全員が同じ方向を向いて笑う。透の耳鳴りが教室で常に鳴り続ける。昼休み、校庭の生徒たちの動きがどこか揃って見える
2,935字 約6分
23
レコメンドの裏チャネル
飛羽が透に警告。これは局所的な炎上ではなくシステムが動き始めた。エンリングのアルゴリズムが市政と連動している疑い。調律師がSNS行動を制御するための社会実装テスト。飛羽がかつて同じものを見たと漏らす
3,061字 約7分
24
既知のシグネチャ
ハルカがAPIパターンの最終分析結果を持ち込む。内部犯行者の社員IDに紐づく名前は飛羽の知る名前だった。元同僚。飛羽が「あいつか」と呟く
3,038字 約7分
25
残り2パーセントの閾値
賛同署名が市民の98%に達する。残り2%は異常者として可視化される。旧共同溝への出入りが難しくなる。ハルカがログ消去で透の行動履歴を消す。飛羽は「カルト的ブームの入口だ」と断言。第1部終了
2,931字 約6分