小説置き場

槻ノ森、犬も吠えず

戸守 礼司 | ミステリー・謎解き群像劇クライム

犬すら吠えない街には、理由がある。誰もそれを口にしないだけだ。

東京多摩の槻ノ森市。犯罪率は低く、住民は穏やか。だがそれは平和ではなく、沈黙だった。元捜査一課刑事の神崎鶫は、この街で私立探偵を始めて奇妙なパターンに気づく。解決した事件の関係者が、後日静かに消えている。失踪ではなく引っ越し。だが行き先は実在しない。

論理と物証だけを信じる鶫の前に、地元ライターの綿貫律が立ちはだかる。「そういう話じゃないと思う」。人間の黒幕は暴かれる。だが根本の謎——この街がなぜ静かなのか——は、最後まで残る。犬が吠えない理由を、鶫はまだ知らない。

エピソード一覧 全25話

1
来ない依頼人
鶫の開業初日。最初の依頼は近所の飼い猫捜索。律が同じ猫を別ルートで追っていて鉢合わせ。口論で終わる
4,047字 約9分
2
空き家の手紙
二件目の依頼。隣人が音もなく消えたと訴える老人。調査の結果、引っ越しの証拠は揃うが、なぜこの街の引っ越しはどれも静かすぎるのか、という微かな疑問が残る
4,903字 約10分
3
存在しない番地
転出先の住所を確認しに茨城へ行く。番地は存在しなかった。帰路、律から祖父のメモについて初めて聞かされる
2,163字 約5分
4
届かない声
新しい依頼。飼い犬が吠えなくなったという相談。調査の過程で、律の祖父のメモの別の断片に触れる。鶫の過去が少しだけ見える
1,926字 約4分
5
書けない報告書
篠原への報告書を書こうとして書けない鶫。律が祖父のメモの別の断片を持ってきて、犬の件に一つの仮説を提示する。だが鶫はそれを受け入れられない
1,924字 約4分
6
語られない退職
篠原に報告書を渡す。その帰り道、鶫は退職の引き金となった事件のことを初めて思い出す。律に少しだけ話す
2,050字 約5分
7
吠えない質屋
新しい依頼。商店街の金物店から工具が盗まれた。蛇口良平の質店に持ち込まれた工具から犯人を特定。だが蛇口は街について妙なことを口にする
1,871字 約4分
8
閉じられない店
閉店する老舗和菓子屋の遺言の真偽を調査。猫の世話の遺産を解明するが、店主が閉店前に『変なものを見た』と漏らしていた余白が残る
1,804字 約4分
9
映らない死角
駅前の車上荒らし事件。元防犯カメラ設置業者が犯人。宇津木謙介初登場。『ここの事件は都内と違う。無理に掘るな』
2,063字 約5分
10
消えたジョガー
雑木林近くでジョギング中に消えたと通報された男性。翌日普通に帰宅。だが記憶が曖昧で、目撃証言がバラバラ
1,968字 約4分
11
届いていない脅迫状
老夫婦への脅迫状事件。息子の自作自演を暴く。母親の『静かに暮らしたかっただけ』が重層的に響く
1,887字 約4分
12
見えない万引き
商店街のドラッグストアで繰り返される万引き。犯人は裕福な主婦。動機は『誰かに気づいてほしかった』。見ないことを選ぶ街の構造
2,015字 約5分
13
燃えない脅迫状
律の情報誌に脅迫状。記事で批判した飲食店主の逆恨み。律の情報売買という裏稼業が発覚する
1,886字 約4分
14
存在しない筆跡
大学の民俗学研究室で発見された江戸期の古文書。真贋論争。1970年代に加筆された箇所に『森に入りし者は戻らず』の記述
2,163字 約5分
15
映らない人影
コインランドリーの防犯カメラに閉店後の人影。調査すると窓越しの反射と判明。だがその影が失踪した住人に似ていると店主が言う
1,923字 約4分
16
届かない転出届
元同僚の女性刑事から行方不明の姉の捜索依頼。計画的失踪と判明。鶫の退職の経緯に少し触れる
3,770字 約8分
17
合わない帳簿
地元NPOの会計不正疑惑を調査。理事長の流用を特定。だがNPOの移住支援リストに欠番の住所が混じっている
3,781字 約8分
18
載らない住所
引っ越し業者の個人情報漏洩事件。名簿の中に失踪者と同じ存在しない住所への転居記録がある
3,385字 約7分
19
戻らない住人
犬の沈黙エリアのアパートで住人が行方不明。部屋には途中で止まった生活の痕跡。過去の依頼人も引っ越していた
3,512字 約8分
20
台帳の空白
依頼台帳を見返す。解決済みの複数の依頼人が街を出ている。最初の依頼人の消失。解決=安全の前提が崩壊する。第1部クライマックス
4,753字 約10分
21
失踪者リスト
1,257字 約3分
22
声が届かない場所
1,438字 約3分
23
帰らない犬
1,366字 約3分
24
消えた元勤務先
1,758字 約4分
25
一致しない名簿
1,891字 約4分