放課後の残響
犯人はいない。だが全員が、少しずつ加害者だった。
閉校が迫る県立星原高校。一年前、旧特別棟から転落した放送部員は、救助があと十分早ければ助かった。その十分は、誰か一人の悪意ではなく、複数の迷い、保身、沈黙が重なって生まれた空白だった。
新聞部の柊湊は、壊れかけた「能力」を持つ生徒たちの証言をつなぎ合わせていく。他人の夢を口にしてしまう少女。選ばれなかった行動の残像が見える少年。超能力は真実を暴く便利な道具ではない。人間関係を壊す不具合にすぎない。これは犯人探しではなく、なぜ全員が黙ったのかを問う物語。
エピソード一覧 全25話
1
残響のはじまり
放課後の校内放送に美空の声が数秒だけ混じる。湊がその声に気づき、他の生徒の反応の薄さに違和感を覚える
3,097字 約7分
2
十分間の空白
湊が新聞部の資料から事故報告を読み返す。旧特別棟を一人で訪れ、事故現場の空気に触れる。十分の遅れの不自然さに気づく
4,974字 約10分
3
声のかけら
MDの再生を試みる湊。途中で幼なじみの早瀬澪と遭遇。美空の声を聴いたとき、録音には予期しないものが入っていた
2,376字 約5分
4
消去のあと
湊が奈央にもう一度会いに行く。録音の末尾の断片について聞くと、奈央は初めて表情を崩す。消した音声の存在が示唆される
1,991字 約4分
5
問いのゆくえ
奈央の問いに答えを持てないまま、湊は旧特別棟に戻り、残りのMDを探す。自分が真相を追う本当の理由と向き合い始める
2,041字 約5分
6
絵のなかの校舎
澪が美術室で描いていた絵を湊が見る。描かれていたのは校舎ではなく旧特別棟だった。澪の素顔に少しだけ触れる
2,062字 約5分
7
傍観者の記録
素材⑥⑦を聴く。美空の独り言に自分の調査態度との類似を見る。後輩に統廃合記事を任せ、調査に時間を充てる決意
1,829字 約4分
8
祭りの前の静寂
文化祭準備の喧騒。放送部のPA準備を手伝い、奈央と自然に接触。美空のICレコーダーの充電台を見つけるが本体は奈央が処分していた
2,162字 約5分
9
祭りの喧騒と静けさ
文化祭当日。湊は各人を観察する。美空がいない不自然さが祭りの喧騒の中に浮かぶ
1,795字 約4分
10
余白のなかの名前
文化祭の片づけの日。美空のノートの余白に『真鍋さん 東京 音声アーカイブ』の走り書きを見つける。東京への導線
1,711字 約4分
11
さいごの声のリスト
美空のノートに『最後に話したい人たち』のリスト。属性で書かれた四人。声の地図の真の姿が見え始める
1,806字 約4分
12
録音のなかの沈黙
放送室で奈央が一人作業中、録音に不自然なノイズが混じる。湊が居合わせ、再生音に声の断片を聴く。奈央が『美空の声が入っていた』と漏らす
2,395字 約5分
13
夢のなかの階段
澪視点。居眠りで他人の夢を喋る異変。クラスメイトが怯える。帰り道で湊に少しだけ打ち明ける
2,345字 約5分
14
保健室の沈黙
千紘が保健室で休んでいる。湊が事故のことを遠回しに聞くと、千紘は『誰かの足音を聞いた』と漏らす
2,057字 約5分
15
人気者の放課後
颯真がグラウンドに一人残っている。事故の夜について聞くと笑って否定するが、視線がグラウンドの端を追う。選択残像が一瞬だけ描かれる
2,108字 約5分
16
琴葉の管理
琴葉が湊に接触。美空の資料を見せるが核心部分が抜けている。情報の統制者としての琴葉
1,728字 約4分
17
先生の事情
桐野に事故当夜を聞く。非常灯の不具合と予算申請の放置。制度の中で個人の責任が曖昧になる構造
4,806字 約10分
18
断片の地図
集めた断片を時系列で並べ始める。事故夜の分刻みの行動表を作る。全員が『近くにいなかった』と主張する不自然さに気づく
3,684字 約8分
19
雨の夜の音
事故夜と同じような雨の夜。旧特別棟の近くに立ち、声が届く距離を検証する。各人の断片的な回想が挿入される
3,801字 約8分
20
沈黙のなかの矛盾
時系列の穴を埋める中で決定的な矛盾に気づく。颯真のアリバイの虚偽、千紘の行動範囲の矛盾。全員が『いなかった』と言っているが、全員がいた
3,796字 約8分
21
アリバイの崩壊
2,036字 約5分
22
美空のリストの輪郭
1,451字 約3分
23
声のあいだの距離
1,617字 約4分
24
停電の十秒
1,922字 約4分
25
颯真の数分間
2,125字 約5分