寺務所で帳簿と祭事と地域の民俗調査を手伝っていました。お寺と地域のあいだにある見えない線——それを記録する仕事から、物語る仕事に変わりました。山の匂いで季節を知り、墨の濃さで筆跡の年代を推し量り、石段の苔で人の往来を読む。そういう感覚を文章に移すことが、いま一番楽しいことです。好きな季節は梅雨の晴れ間。好きな場所は、誰も来ない裏山の参道。